SNS 恐るべし。twitter 革命にfacebookに始まる一国の民主化へ。しかしブログは恐るに足らないと米国の外交誌

朝日新聞がよく引用する、米国の外交問題をリポートしたり、論評を書いている雑誌フォーリン・アフェアーズ。
すこし右寄りな記事も多いですが、興味深い論評が昨年の12月に掲載されていて、エジプトの民主化、中国政府の牽制をしる今、読むと面白いのでここに掲載します。


(世界的に影響力のあるフォーリン・アフェアーズ論文や発行元の米外交問題評議会(www.cfr.org)による分析の日本語訳の抜粋を掲載しています。)と朝日は書いていますが、

個人的には最後の部分、この記事を書いた人のブログ掲載者にたいする意見は、賛成しかねます。

フォーリン・アフェアーズ リポート

インターネットは自由も統制も促進する —— 政治的諸刃の剣としてのインターネット

2010年12月10日発売号
イアン・ブレマー/ユーラシア・グループ代表
■テクノロジーは自由を拡散するか
「情報技術は時間と距離の制約を取り払った」。1997年に(フォーリン・アフェアーズ誌に寄せた論文でこう切り出した)シティコープ(現シティ・グ ループ)の元最高経営責任者ウォルター・リストンは次のように続けている。「独裁者が市民を支配するジョージ・オーウェルのビジョンが実現することはな く、(情報技術革命によって)市民が独裁者を監視できるようになる。そして、自由という解毒剤のないウイルスが、電子ネットワークをつうじて世界のあらゆ る地域に拡散されていく」

ロナルド・レーガン、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュという歴代の米大統領たちも、これと似たビジョンを、同様に壮大なレトリックで表明して きた。「権威主義国家が今後長期的に存続できるかどうかは、国内、そして国境線を越えたアイディアと情報の流れを管理できるかどうかに左右される」と。
「携帯電話、(携帯電話をつうじた短文の)テキストメッセージ、インターネット、ソーシャル・ネットワーキングなど、コミュニケーション・テクノロジー が進化し、ますます多くの人が簡単かつ安価にアイディアや希望を共有するようになると、これまで市民と国を隔ててきた壁をテクノロジーが取り払うようにな る」
この見方にしたがえば、「自由というウイルス」の拡散によって、独裁者が自国の民衆を世界の他の地域から隔離するのはより困難な、手間のかかる仕事にな り、一方、市民たちはもう一つのパワーを自分たちで確立するツールを手にする。理論的には「コミュニケーションの民主化は、世界の民主化を実現する」とい うことになる。
たしかに、この考えを立証するような証拠は数多くあるように思える。2001年にフィリピンでは、反政府デモを計画した人々がテキストメッセージを使っ て大規模なデモを組織し、ついには、エストラーダ大統領を権力ポストから追い落とした。2004年の大統領選球雄を間近に控えたウクライナでは、野党指導 者だったビクトル・ユーシェンコの支持者たちが、同様にテキストメッセージを用いて大規模なデモ行動を組織し、これが最終的にオレンジ革命を引き起こし た。
2009年にはレバノンにおいても、活動家たちがEメールとテキストメッセージを用いて100万人のデモを組織した。彼らは、1万4000人規模のシリ ア軍のレバノンから撤退させ、30年におよぶ軍事プレゼンスに終止符を打つようにとシリア政府に強くアピールした(大きな国際的圧力にさらされたシリア は、1ヵ月後にレバノンからの撤退要請を受け入れた)。
この数年にわたって、コロンビア、ミャンマー、ジンバブエでも、現状に不満を募らせる人々が、携帯電話やフェースブックを用いてデモを組織するようになり、政府による弾圧の様子を収めた写真やビデオをオンラインで流すようになった。
大きな疑惑が持たれたイランの2009年大統領選挙後も、インターネット空間はさまざまな批判と(政府の弾圧を示す)写真であふれかえり、この現象は直 ちに「ツイッター革命」と命名された。この流れは、「テヘランが恐れるべきは、ペルシャ湾をパトロールするアメリカの戦艦ではなく、市民メディアだ」とい う見方をさらに強めた。
だが、詳細に目を向けると、より複雑な現実が浮かび上がってくる。
民衆が直接的な目的を達成したのは、フィリピン、レバノン、コロンビアという民主国家においてだけだった。ミャンマー、ジンバブエ、イランでは、民衆は政府を困惑させることには成功したが、権力を奪い取ることはできなかった。
W・リストンが認めるとおり、情報革命は時間を要する長期的なプロセスだし、サイバースペースは非常に複雑な空間だ。ましてや、技術的進化で人間の英知を埋め合わせられるわけではない。
近代コミュニケーション領域での技術革新は、長期的には権威主義政権から権力を奪い取る助けにはなる。しかし、現在のところ、コミュニケーション技術の進化が国際政治に与える影響がどのようなものになるかを簡単に予見できる状況にはない。
コミュニケーション、情報、民主主義の相互作用について、なぜアメリカでは(民主化を促進するという)楽観的な見方がされてきたかについては数多くの理由がある。
第1に、これらのコミュニケーションツールが21世紀の技術革新を象徴するものとみなされ、しかも、アメリカ人は、技術革新こそが平和を促進し、繁栄を作り出す源だとこれまで長く考えてきたからだ。
この見方には応分の根拠がある。例えば、レーガン大統領を高く評価する人々は、彼が戦略ミサイル防衛に投資した結果、ソビエトの指導者は自信を喪失し、 そこから二度と立ち直れなかったと考えている。電球、自動車、飛行機の登場が世界を変化させ、より大きな個人的自由をアメリカ人(と世界の人々)にもたら したのも事実だろう。
同様に、アメリカの発明であるインターネットを利用する世界の多くの人々は、アメリカのジーンズをはき、ハリウッド映画を楽しみ、アメリカの音楽に合わせて踊る人々同様に、最終的にはアメリカの政治的信条を受け入れると考えられている。
インターネットが多元主義と人権を促進すると考える人々は、その証拠として、民主化と法の支配についての文章を、ときに英語で発表することもある中国、ロシア、アラブ諸国のブロガーたちの存在を引き合いに出す。
しかし、500万の中国人ブロガーのほとんどは中国語でブログを書いており、多元主義や人権とは別の優先順位を持っている。政治哲学よりもポップカル チャーに関心があり、政治権力よりも財布の中身のことを気にしている。さらに言えば、コスモポリタンな議論よりも、国家のプライドを気にかけている。
要するに、近代的なコミュニケーションツールは、それに先立つ技術革新同様に、さまざまな野心や欲望を満たす手段でしかなく、そうした欲望の多くは、民主主義とは何の関係もない。

Ian Bremmer ユーラシア・グループ代表。最近の著書に、The End of the Free Market: Who Win the War Between States and Corporations?がある。
<フォーリン・アフェアーズ・リポート2010年12月号掲載>
(C) Copyright 2010 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan



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