移民の子の国の大統領選とその選挙システム、日本の総裁選との比較




移民の子の国の大統領選とその選挙システム、日本の総裁選との比較

                        山﨑千恵子


先日、米国で大統領選に備え候補者の公開テレビ討論会が行われた。そして日本でも先週末の立憲民主党代表選立候補者の討論会に続き、今朝は自民党の総裁選候補者のテレビ討論会が行われた。

Who Was Kamala Harris's Mother, Shyamala Gopalan Harris ...先週末カマラ・ハリス氏の自伝と伝記の本を読み終えたばかりで、彼女自身の言葉を借りて米国の大統領選も見ていきたい。

『The Truth We Hold』 by Kamala HarrisPenguin Audio。2019

『Kamala’s Way 』by Dan Morain。Simon&Schuster  2021



(左からカマラ大統領候補、母乳癌研究者シャマラ、妹弁護士マヤ

town and Country 電子版より 


カマラはマドラス(現タミールナドゥ州チェンナイ)出身の細菌学者の母シャマラShyamala Gopalanの娘として生まれ、「カマラ」(ヒンドゥー教の女神ラクシュミーの別名から名付けられ、サンスクリット語の「の女性」 Kamalに由来する。注:カマラも幼少期には母に連れられ何度もインドに渡って、祖父母とも交流しているようだ。

Carnatic 音楽の著名な歌い手だった祖母は、自分の子には医療、エンジニアもしくは法律を学ばせたいと考えていた。その願い通り、デリー大学のLady Irwin College 卒業後、カリフォルニア大学バークレー校で分泌学を学ぶため米国に移住した。

カマラの父ドナルドDonald Harrisも、ジャマイカからカリフォルニア大学バークレー校に開発経済学博士号を学びに来、1960年代全米を覆っていた市民権運動の最中、二人は出会い、やがてカマラと妹マヤが生まれた。*時事通信提携A F P B B ニュースhttps://www.afpbb.com/articles/-/3299896

学問を極めようと大志を抱き渡米し、民主主義の骨幹の人民のための政治について考えた親のもとカマラは育った。両親は別れ、カナダに渡った母はがん疾病学の研究やマックギル大学で教鞭をとっていたが、その後カマラは母親とカリフォルニアに戻る。

その後カマラは両親の後を追うように社会運動に没頭し、公平なる社会を目指すようになり、H B C(Historical Black College:歴史的黒人大学)のハウワード大学から、やがてカリフォルニア州の司法長官から連邦上院議員へと上り詰めていく。

カマラは、移民の人権問題や、racism 撤廃に向けたバス通学プログラムに反対した現大統領バイデンとの討論会で、彼の教育の不公平さを言及し、自分のような移民やマイノリティー、幼児の立場を擁護する側に回った司法処理を行ってきた。児童虐待撤廃に尽力し、収監者再犯を防ぐための受刑しながらでも高等教育を受けられるプログラムをはじめ、銃規制にも積極的に取り組み、格差社会における公正な社会を念頭に、上院議員に選出されてからは新米議員にも関わらず安保委員会に入ってからは、国家安全保障課題にも積極的に関わってきた。

日本でも国のトップである首相を決めるのは直接選挙でなく、下記の通り間接選挙だということを最近知った。アメリカでは大統領選予備選を取り入れている州ごと間接選挙も行われている。大統領選に州ごとに一定数のエレクト代議員を指名するが、その予備として国民一人一人がどの政党を支持するか予備登録をしなくてはならないということだ。選挙になれば自動的に投票用紙が送られてくるわけではない。

自分は民主党支持なのか、共和党支持なのかを選挙のはるか前に登録していないと選挙ができないシステムになっており、それも州ごとに違ってくる。*朝日新聞電子版より抜粋https://www.asahi.com/international/president/system.html 

選挙の仕組みは複雑だ。大まかにいうと;

表(1)全米各州での党員集会と予備選挙
(2)2大政党である民主、共和両党の全国大会
(3)「大統領選挙人」を選ぶための一般投票
(4)選ばれた「大統領選挙人」による選挙人投票

という手続きを経る。(1)と(2)の段階は、民主、共和両党がそれぞれ、だれを指名するのかを決める党内手続きの期間。公式の「選挙」ではない。日本の選挙のように「告示」や「公示」はないため、選挙運動をいつ始めるかは候補者次第になっている。


【党員集会と予備選挙】

 民主、共和両党の候補者指名は、一般党員の代理人となる「代議員」が党全国大会で投票して決める。その代議員を選ぶのが予備選や党員集会だ。

 この党員集会と予備選挙が、長期間にわたる大統領選挙の始まりとなる。ここで、各州の指名争いが行われ、州ごとに「勝者」が決まっていく。

 党員集会になるのか、予備選挙になるのかは州によって異なる。

 予備選挙は、投票所に足を運んで投票し、通常の選挙に近い。政党登録した有権者だけが投票できる「closed」とよばれる方式と、登録していない無党派層independentも投票できる「open」とよばれる方式があり、これは州によって異なる。



ニューヨーク市に住む娘によれば、ニューヨーク州では上記で書かれるところのindependent無党派層と事前に登録すると民主党や共和党の予備選挙には参加できず、本選挙での投票のみが認められている。一方、息子らの住むマサチューセッツ州では自分はどこの政党を支持するか決めないで、independentと予備登録していても、民主党大会など、政党の党大会にも投票参加ができるということらしい。

スウィング・ステートと呼ばれる州民主党員も共和党員(革新・保守)が接戦している州であるニューヨーク州やフロリダ州・ペンシルバニア州等はマサチューセッツ州のように無党派independent と予備登録するとでは予備選挙に参加できないのだ。


これは保守政党に有利になる傾向がある。「政党登録した有権者だけが予備選挙に投票できるClosed 方式は、全米51州のうち12州と国会議員が選出できないワシントンD C区、さらに国会議員も大統領参政もできないプエルトリコ区、また部分的に予備選挙ができるオレゴン州、ニューヨークに近いコネチカット州など3州を加えると、実に15州+2区になる。元々自ら赴いて事前登録をしないと選挙もできないとなると、政策や自分の生活の将来、国の将来を考える若者がいるのも当然と言えるのではないだろうか。*ここまでMovement Advancement Project HPの抜粋https://www.lgbtmap.org/democracy-maps/state_primary_systems

住民票さえ各自治体にあれば、18歳になれば自動的に投票の入場券が送られてくる日本とは大きな違いがある。日本では在留資格を持っていても外国籍の人々は投票できない。納税の義務はあり、国保・年金を支払い、行政サービスは受けられるが、基本的人権の参政権はないのが 日本生まれでも両親が共に外国籍の住民だ。

また日本では投票所ごとに投票立会人がいるが、アメリカでは投票後も各投票数が間違っていないかを承認する認証人も州ごとにいるそして投票カウンターの投票数を認証する。全米のN B Cニュースで、トランプ候補者が、

アトランタ(黒人文化の中心地)の選挙演説で、

アトランタのあるジョージア州の認証人に、

自分の政治集会で公然と謝辞を表していた。

いったい何のために政治集会に認証人に謝辞を表すのだろうか、

自分の当選に有利に働いてくれたという意味にしか取れない。

前々回2016年の大統領選接戦区のジョージア州では、

投票数に問題があるとされたことを取り上げていたことが思い出される。


日本の政党代表選立候補者の顔と 誰が投票するかを見てみたい。

私は米国の日本語学習者への授業に『とびら』という上級日本語学習の教科書を使用していた。日本の政治について教える内容の読解文である。「日本の選挙戦に勝つためには昔から ジバン・カンバン、カバン(地盤、看板、鞄)の三つが大切だと言われている」と書かれていて、「候補者がその立候補地に地縁・血縁などの縁がりがあることで選挙が決まることが多い」、さらに「国民にとって一番大切なはずの政策が入っていない」とこの教科書の作者嘆く場面もある。私も失笑しながらこれを日本政治として紹介した。さらに二世議員、世襲議員の説明もされ、「残念ながら日本では選挙の結果を左右するのは、政策よりもやはりどのぐらい強い『』三バン」があるかだ(中略)そして、2000年の衆議議員の当選者の約7割がこの二世議員もしくは祖父が議員だったという世襲議員だ」と解説していた。

また候補者が有名人だからとか有名大学出身だといった

看板を理由に投票する有権者も少なくない。*日本語上級絵の扉by岡まゆみ・筒井通雄 くろしお出版2013/「日本の論点2004」文藝春秋 

こんな報道もある今回の【自民党】総裁選に出馬を表明した世襲議員は

小泉進次郎氏だけではない。石破茂氏、河野太郎氏、林芳正氏も国会議員の父から

地盤を引き継いだ。加藤勝信氏は妻の父、出馬に意欲を示した野田聖子氏は

祖父が国会議員。2001年以降の自民の首相を見ても、

菅義偉氏を除き、小泉純一郎氏、安倍晋三氏、福田康夫氏、麻生太郎氏、

岸田文雄氏はいずれも世襲議員だ。(東京新聞2024年9月11日 より)

日本の首領選挙も、米国ほど複雑ではないがある意味、   間接選挙であることに気がついた。

つまり政党代表選に党員として参加ができ、

さらに米国でいうところのindependent無党派として直接選挙で議員に投票することも

できるわけである。政党に党員選挙に参加できるよう登録しておき、

そしてまた国会議員選挙では直接参加できるようになっている。

これを利用して国政に関わらない手はないと考えている。

よく政党代表の(あくまで党員よる直接投票を謳っている政党によるが)候補者による政策、

公約マニフェスト、いろいろな事態にどういった姿勢で臨むか対処の見解を聞くなど、

もっと耳を傾けられるだろう。





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