ドイツ徴兵制廃止の報をうけて

先日の日本からの新聞で
ドイツ、スウェーデンでの徴兵制の見直し、廃止の報が記事になっていた。
EUでは上記の国以外に
すでに徴兵制の廃止を決定している国もある。
台湾でも、中国との融和を望んでいる現政権によって、5年後の廃止を考えているとの事。

ニュースソースによると、徴兵制廃止の背景に経済的理由を挙げているが、
実際のところかなり多くの若者が良心的兵役拒否(自分はこういう理由で兵役を拒否すると堂々と回避するのでなく訴え、認められる)を認めていて、
兵役の年齢に学校へ行ってれば、卒業まで何年間かは兵役を先延ばしできる
(兵役を免れるために)ドイツの友人はかなり年をとっても学生しているものが多かった)とか、
兵役の年数だけ、軍隊にいくより福利厚生等の社会サービスに従事する事が
容易に認められているので、徴兵制があまり意味をなさないようになったとの理由もあるらしい。

その一方で、先回投稿した韓国からの
急激な留学生数の理由は、実は韓国の厳しい徴兵制にあるのではないかとの私見を
何人もの韓国からの留学生や、その親御さんにぶつけてみた。
しかしそれはあり得ないという答えが一応に返ってきた。
つまりいくら海外に兵役を免れるため留学したとしても、兵役の時期がずれるだけで絶対に免除されない、
何かの形で免除されたとして、それはとても不名誉な事になるから、兵役拒否は韓国ではあり得ないという答えが圧倒的だった。
だから私の韓国からの米国への留学生の多さは、
むしろ先回の投稿のごとく、留学という学歴の異常なほどの偏重にあるようだ。

4年前のヨーロッパ旅行の旅先どこでも見かけた韓国人バックパッカーは
ドイツでも、イタリアでもギリシャでも、たいてい女子学生2−4人位のグループに、鞄持ちのような男子学生が一人くっついていたが、青年層の男女差人口のバランスはどうなんだろう。



さてこうしたニュースは、アメリカのメディアからは聞こえてこない。
アメリカにはいわゆるドラフト(一定の年齢になったら兵役が課せられる法律はないと思っている人は多い、私の間もなく18歳になる息子の友人の親達は、かなり非アメリカ人ヨーロッパ出身が多く、数人に聞いても皆一応びっくりする)こそないが、セレクトサーピスなるものを15.5歳の仮免許の申請で、しっかり明記されている。
このセレクトサーピスとは、緊急時にはサービスつまり従軍しますと誓って署名する制度で、
我が家でも、
息子に早くもその宣誓書が送られて来た。
しかし良心的徴兵拒否の申請をするつもりでいる。
それにはもちろん保護者の保証署名も必要だ。

この緊急時にはという理由で、コーストガード(沿岸警備隊)になったものもいた。
アメリカでは軍人は基本的には志願兵で、志願の理由の多くは経済的理由による。
アメリカの大学教育費は異常に高額だ。
公立でも他州であれば私立と同様、(短大は結構あるが、NYやカルフォルニアでない限り州立の4大はどの州もあまりない)ほぼどこも授業料だけで3.5万ー4万ドル(3百万円から四百万円はいる。これにあらゆる費用を不含めれば、年間かるく5万ドルはいく。奨学金もでるが、とても限られているので、多くの学生が親のサインとともに学生ローンから日本円にして1千万円以上の借金とともに卒業して、世の中にでていく。
こうした事情を避ける方法の一つに、兵役を選ぶ若者が多い。
志願兵になれば、その間の生活費と多少の給料と各種免許もとらせてもらって、さらに大学に行く学費がでる。

しかし落とし穴にはまった学生も何人か知っている。
クリントン政権時代に教育費のため志願して軍に入り(当時は戦争がはじまるなんて考えていなかったから、簡単にどの学生も考えて志願したそうだ)やがて大学へ行くつもりでいたら、
ブッシュ政権でいきなりイラクの戦地に送られ、さらに自国の兵器で被爆してしまう。という悲惨な結果をもたらしていても
この国はまだセレクトサーピスを見直そうとはしない。

最近、オバマ大統領は自作でアメリカ偉人の伝記を取り上げた児童文学を出版した。この出版利益を、
家族をイラク戦で亡くした退役軍人家庭を救援する基金に寄付するそうだ。しかしそれより
軍事を減らす事も考えてもいいんじゃないだろうか。

日本では自衛隊が軍服を着て、ショッピングモールや高校へいって従軍を募集する事は先ず考えられない。
軍人が志願兵を募る斡旋業をいわゆるリクルートと呼ぶ。日本でも一時国会まで召還されたリクルート社とは何の関係もないが、また各種大学の案内とともに、軍からの誘いもまるでそれとは分からない宣伝文句、
たとえば環境に考慮した未来をみんなで造ろうと訴えかけてみたりして巧妙に世間知らずの若者を
国防という理由で誘う。

軍と密接な活動をしている情報諜報員CIAの斡旋も年頃の息子を持つ郵便物として届く。「君の頭脳をためしてみないか」といったプロパガンダを掲げて。


アメリカがイラク戦争につぎ込んだ額は4560億ドル(約54兆6600億円)。この莫大な予算を他のことに使っていればどんなことができるかをBoston.comが取り上げている。
世界中でこの軍備、軍事費を見直す時期に来ているのではないか。


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コメント

  1. 韓国の留学の多さに関しては、兵役も原因の一つでしょう。ただし、それを大っぴらに、特に外国人(更に日本人)に対して表明することは憚られるので、本音と建前の使い分けがなされているのでしょう。同じ韓国人同士でも「兵役逃れ」は非難の対象になり、「非国民」扱いされるため、本音で兵役逃れしたくても、それを表明することはしないだけなのではありませんか?

    なお、アメリカ在住のようでSelective Service Systemの義務があるようで大変そうですね。良心的兵役拒否をするという意味で、その登録自体を拒否することは出来ないのでしょうか?登録自体の拒否が困難であれば、現実に徴兵制が行われたときの徴兵拒否も困難なのではないかと心配します。逆に言うと、徴兵拒否する覚悟があるのならば、登録の段階で拒否し、その制度を無くす運動を起こすことはできないのでしょうか?

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  2. モンタギュー2011/02/12 10:22:00

    コメント拝見。そうかもしれないと考えながら、これを書いています。
    また徴兵制にしても
    Conscientious Objector の解釈が日本語の良心的徴兵距離では伝わらないのではとかんがえさせられる事件が最近あって、ちょうど、このセレクティブサービスについて、詳細を記事に書こうとしています。もう少しお待ちください。

    返信削除
  3. ようやくコンシエンス・オブジェクターについて、米国での制度の中でまとめ、ある雑誌に寄稿しました、近々このブログように編集します。そちらもどうぞ。

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  4. 韓国は良心的(非良心的というものがあるのか?)兵役拒否が認められていないため、現状の世界の中でも最悪の国家です。

    台湾も良心的兵役拒否が可能ですし、ドイツやスウェーデンが徴兵制を廃止したことで、世界の流れは徴兵制廃止へ向かっています。

    しかし、韓国だけは、廃止どころか良心的兵役拒否すら認めず、更には少子化の影響で、軍の規模を維持するために、従来ならば徴兵検査で4級(公益勤務要員=軍ではなく、市役所などでの勤務)判定になる高血圧や糖尿病の持病持ちですら、3級(現役判定=軍に入営)となってる状態です。このような、世界の潮流に逆行する国家の状況を、「素晴らしい」「日本も見習って徴兵制を導入すべき」などと賛美する日本の政治家や言論人も存在します。

    私は、男性ですので、たとえ他国の問題であろうとも、他人事とは思えません。何とかして現役ではなく、補充役(4級判定)を受けて、入隊したくないと考える韓国人男性はやはり多いです。そのため、大学在学中に資格を取得して、産業機能要員になったり、理工系の大学院へ進んで専門研究要員になったりする人も多いようです。

    海外留学、特にアメリカやカナダへの韓国人留学生の多さは、英語の習得(英語能力で「通訳兵」になることも可能)も一つの目的でしょうし、そのままPh.Dまで取得して永住・帰化して兵役を逃れたいという淡い、そして切実な欲求も奥に隠されているかもしれません。こういうことは、表立って言いにくいことでしょうから、中々、語られることではないかもしれません。

    最近、私は韓国に生まれていたら、どうしようかと悩みます。時には考えすぎて、夜も眠れないこともあります。上に書かれていましたが、「留学で兵役が逃れられるわけがない」「猶予期間が延びるだけで、いつか必ず行かなければならないからだ」といった話も確かに聞きます。そういう「定められた運命」「逃れられない宿命」というニュアンスの言説を見聞きするたび、胸が苦しくなり、何で男子というだけで国家の為に、死ぬ覚悟を求められなければならないのかと煩悶します。

    アメリカも、Selective Serviceへの登録義務がありますが、韓国のように実際に軍に入って戦うわけではありませんので、韓国と比較すれば余裕があるとも言えます。韓国人の男性が良心的兵役拒否するのは大変に厳しいことです。日本の第二次大戦中の「非国民」扱いを受けるような覚悟が必要で、良心的兵役拒否が合法化されていないため、刑務所へ収監されて、前科持ちとなり、多くの職場へ就職できない羽目にもなります。

    こういうことを考えていると、本当に女性は気楽でいいなぁと思います。

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  5. 匿名さんコメントありがとう。貴重な意見ですね。また自分の意見を公けにする勇気に敬服します。韓国の兵役はたしかに北朝鮮に対する脅威があらわになったものなのか、ますます国民男子に重くのしかかりますね。私の知人で送料として人権を訴え投獄された人もいます。また光州事件で多くの基本的人権を訴えた学生が国家の取り締まりのもと処罰され死んでいったのはそんなに昔の事ではありません。アメリカ人夫がその記念集会に日本からソウルに飛んで催涙弾を投げられたのはまだ15年前です。いくら経済が世界に台頭しても、まだまだ民主的な動きが規制されているようにも思える国でした。その中でアメリカの大学で、欧州の旅行で出会う韓国人若者は確かにまず、自分の境遇を変えていこうとする熱意を感じます。それを国を帰る事への大きなうねりになることを願います。

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