18歳、米国市民としての責任と義務その2「覚悟」を決める

18歳、米国市民としての責任と義務として以前投稿しましたが、その後数ヶ月の歩みを記しておきたいと思います。
息子が18歳になる直前に、合衆国政府から封書が届きました。その封書は、彼宛に毎日束のようにやってくる数通の大学案内にまぎれていました。一通はセレクティブ・サービス(国の緊急時には徴兵に応じますという登録書)の封書、さらに無差別に選ばれた裁判陪審員への出頭要請もあります。ナショナルセキュリティー(国家安全委員会)からの外交、安全保障に関する青少年リーダー養成フォーラムつまりCIAへから、奨学金もだすからといった会議への参加招待も来ていました。

息子は陪審への出頭をとても誇りに思っていたようです。学校でも職場でも欠席扱いにならず、陪審員としての指定案件の審査を済ませて選ばれれば、裁判所から某の金一封も支給され、アメリカ国民としての義務を果たします。本人は一人前の、意志ある成人と扱われた気がするのか「誉れだ」として勇んで出かけました。

一方、セレクティブ・サービスこれこそが、米国で男子を生み18年間いつも、片時も母である私の頭から離れなかった徴兵制の予備登録書であります。セレクティブというからには選択制かなと思いますが、いやいやそれはお国の緊急時には、国の為に身を呈して尽力することを誓う徴兵登録であるところに間違いありません。登録書は運転免許書と連携し免許申請時に訊かれ、さらに大学の申請時にも、高額の授業料(全米学部に関わらず、授業料と初年度は近隣学生でも寮に入る事になっているから、すべてあわせて日本円500万円位、年間かかる)の免除、もしくは奨学金要請を行うのに、大学や私設の奨学金申請エージェーン トから、政府から徴兵登録はすませてあるか、済ませてなければ即刻するようにと促されます。

何人かの男子をもつ親にも聞いてみると、「これはいわゆる一般でいる徴兵制でない、悪魔で予備登録だから、署名したからといって即、軍隊にとられる訳ではない」ということで署名した。という弁護士の資格をもち、大学の法学部部長までしていた父親からの返答もありました。(それでも署名したら国の戦争行為そのものに協力したと私は解釈しますが) また即大学の授業料奨学金申請をしなくてはならないので、考えずにその場で息子の替わりに署名したという母親がいたり、そんなことは知らない、まだ運転免許をとったばかりだからかどうか、セレクティブサービス封書そのものを、18歳になっているがもらっていないというクラスメート男子も数人いました。

母親として息子には常々、徴兵拒否コンシエンシャス・オブジェクターとして登録してほしいと願っています。全ての生命を敬う人間になってほしいと日本の祖父母に命名してもらった「敬生」という名を持つ息子です。父親であるアメリカ人夫は、原子力潜水艦を製造する軍隊の町に育ち、父親も義父も軍の仕事に携わり、母親の夫義父はGEジェネラルエレクトリック社でも仕事をしていました。しかし夫は18歳の時、自分宛にコンシエンス・オブジェクターとして書類を送付し、自称コンシエンス・オブジェクターになっています。しかし息子には彼の人生なのだから本人の意思を尊重しようとの考えです。


このコンシエンシャス・オブジェクターということば、日本語では一般的に良心的徴兵拒否と訳されていますが、これでは本当の意味が薄れているのではないかと思われます。そう思い始めた背景として、ここ数ヶ月の息子との会話、家族の会話、周りの平和活動家の意見や、仏教僧と殺生について話し合ったことから、この言葉、そして徴兵登録の背景、意味について考えてみたいと思います。



コンシエンシャスは良心、良識と辞書には解釈されています。この場合「覚悟、自覚」とした方が、ぴったり来ると考えます。コンシエンシャス・オブジェクターという行為はある意味、非暴力直接行動の一つと解釈できます。ボストン郊外でソローがメキシコとの戦争にあてる人頭税を拒否したのも、トルストイがロシア貴族の支配を許さなかったのも、ガンジー翁が首宗国イギリスへの服従に抵抗したのも、クエーカー教徒の英人ジョナサン=ダイモンドの「戦争論」も、そしてヒトラーのために闘うのを拒否したフランツ=イェーガーシュテッタ—の例にみられます。つまるところコンシエンシャスとは、トルストイのいう「真実を認識し、公言すること」であり、それはガンディー翁が説いたサチャグラハ(真理の力)に相通じるものだと信じます。良心を実践に移す力、人が考え信じるところの内なる良心を行動にする、意志の力でもあると、このコンシエンスの言葉の意味を解釈するようになりました。

アメリカ合衆国の現行法律では、18歳以上の米国籍男子は、この登録書への署名を義務づけていて、あえてその法に背き登録をしないとオブジェクター(拒否)するものになります。自らの良心コンシエンシャスの下に覚悟をもって、義務を拒否することが、このオブジェクターの行為であります。セレクティブサービス庁のホームページをみると、確かに合衆国政府は、コンシエンシャス・オブジェクターを欧州諸国の様に認めてはいるようですが、それは宗教的な理由に限っていると明記しています。補足として政治信条、ポリティカルな理由や本人の思想はこれに入らず、裁判所および所定の所轄場所に本人と必要であれば、本人の意思を証明出来る宗教家クラージーが出向き、コンシエンシャス・オブジェクターになる正当な理由をのべ宣誓をします。

コンシエンシャス・オブジェクターになると、どんな覚悟が必要か。それは親が肩代わりしてやる事も、他の手段として手を貸す事も、解決することもできない。18歳である息子自身のコンシエンシャスであり、良心です。米国の男子一市民としての登録義務をはねのけ、この国に住んで行くという覚悟を決めて行かねばならない事であります。息子にこの意志の力が備わっているようにと祈るばかりのここ数ヶ月でした。私は彼に自分の願いばかりを伝えてました。

今18歳、高校卒業を控え大学進学を決めて、独り立ちしようとするに際し、私達夫婦は仏教徒として、息子を育てたつもりです。仏教で言う実相真如の虚空に飛び立てる精神の礎を築けたでしょうか、親の私達はそうした環境を与えられたでしょうか。但行礼拝、平和行進参加、仏教僧と平和活動家との夕餉を交えた会話、これらを子どもたちのある年齢から押し付ける訳にも行かず、遠目に見て来た息子と娘は、何を得てくれたでしょう。

この一月、息子は大学への受験書類を全て提出してから、日本へ法要に一人で参列しました。多くを語らぬ彼ですが、日本の仏教僧、チベット僧、某さんとの出会いや会話から、18歳なりに考え、学校でもその時のことを友人に話しているようです。
学校は縁あって、ドイツ系の魂の養育の場を与える西洋と東洋思想体系を包括教育したシュタイナー学校へ、1年生から最終学年12年生まで通っています。そこでは、高校生になると「施しを考えるパルシボア—」「米文学超越主義としてのヘンリー=ソロー」「ゲーテの自我を自問させるファウスト」「汝の内に神ありを書いたトルストイやカラマーゾフ兄弟を書いたドフトエスキーのロシア文学」を読み合い、「戦争史」「人民史」「文化の起こりとしての神話」を学できました。また校外にもでかけ、ハーバード大主催の模擬国連に毎年参加して、他校生と討論を交わし議論というものを身につけていっているようです。しかし自分の意見をきちんと表明し、何を吸収していってくれているのか。と母親は思いあぐねるばかりです。

一方、私自身が勤めているチャーター州立高校10年生では、労働史から公民権運動史、そして戦争史(ベトナム戦争、アフガニスタン戦争)を勉強しています。ベトナム戦争アフガニスタン戦争の帰還兵を呼んで話を聞いたり、徴兵・戦地生活をフィクション仕立てで書いたティム=オーブライアン著原名「ザ・シングス・ゼイ・キャリード」(村上春樹邦訳「本当の戦争の話」)を生徒に読ませ、考えさせていました。息子もこうした意見を求められたら、どんな意見で教師に応じるのでしょう。
この10年生のクラスでは、限りなくノンフィクションに近いこのフィクション仕立ての中の主人公がカナダとの国境川まで行き、船から飛び降りて兵役を逃れようとする部分について、客観的に感想を述べていたものの、では自分だったらどうするかという教師の質問にはふれなかった。現実味がわかないのだろう。
 結果として、再三の母親の要請を「ぼくの人生だから」としていた息子は、さっさと自分で選択肢を調査し、もしコンシエンシャス・オブジェクターになるとどういう事を課せられるかということを調べていたようでした。そして父親にコンシエンシャス・オブジェクターとしてやって行くと漏らした。母親を傍目に、息子も夫も大した問題でないと最初はかかっていたが、今はそうも言ってられない事情もでてきました。

たとえば全米各大学の申請には、公立(アメリカには国立はないから各州にある州立)私立問わず、各大学へ提出する私設入試センター主催のテストや志望動機や人生の目標などを問うエッセイの他、コモンアプリケーションという全米大学共通の申請書を数頁に渡りネットで記入しなければならない。家庭の経済事情、親の学歴から教育環境を尋ねられるので、親も一緒になって登録する。ここで細かな各家庭の資産、家計状態や税金支払いが、全てソーシャルセキュリティー番号と連動しているコンピューターで記入してく。学校側からまだ合否が出る前に奨学金および授業料免除申請をしてくださいと通告がはいっていました。
印刷すると30−50頁以上におよぶ、大学用と連邦政府用の申請書それぞれに詳細を問われて、書き込んで行くと、驚いたことに、連邦政府奨学金、教育費ローン要請の申請書2頁目に男子とチェックすると、徴兵登録は済ませましたかとコンピューター画面に出て来ることです。これを済ませてないと、それ以上先へはすすめず、申請がそこで滞ってしまうことになります。

私は目先だけを睨んで、男子に徴兵を課していない国籍を選択すればいいとか、性別を申請しなければいい、または米国外に住めばいいと、あれこれ逃げ道を考えていました。最終的には本人が、コンシエンシャス・オブジェクターとして、人を殺めない、武器を手にしないということを誓い、自分の意志を決定し、その力を貫き公的な場所で表明しなければ認められません。

息子は自分で考え、日々接触する周囲の大人の言動を吸収し自分の意見を先日、決定しました。コンシエンス・オブジェクターとして裁判所に行って自分の信じるところを宣誓し、所定の手続きをすると言い出したのです。

この間も、仏教僧をまじえての夕餉の席で、原子力発電所について、その放射能の弊害を話し合っていましたら、今高校で勉強しているカンタム・メカニック物理だと、放射能が如何に人工でできたもので、それが理論上も消滅しないものかを息子は、大人の活動家たち相手に語っていました。そして物理からニューサイエンス(ヒトの意志、エネルギーを科学する)に話が進み、「ハイヤー・スピリチュアル・パワー」(内なる精神の力)として、組織化された一教会や寺院に属してなくても、合衆国最高裁判所はコンシエンシャス・オブジェクターとして認めるという判決を下したニュースに耳を傾けていました。

母親は無力なものであります。子を腹に宿した瞬間から心を痛め、子が成人していく環境を整えてやることに心身をけずり、子の体がわが身を超えて大きくなると、心も精神も育ってくれたかと思いを馳せます。頭の中は子どもの言動で多少は測ることができますが、心の有り様は強制する事も、替わってやる事もできません。子どもを信じることが、唯一親にできることなのでしょう。もちろん子どもは一人では育ちません、周りの方々皆さんのお力を借りてきました。
息子が選択した人生を応援してやりたいと思うとともに、更なる環境づくりを心がけて行ければと願うばかりです。



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コメント

  1. モンタギューさん初めまして。
    春に日本の高校を卒業して秋からBeloit Collegeに進学するaonaという者です。タケヒメさんのブログでコメントなどを見ていてそこからやってきました。

    いくつか記事を読ませて頂いてて、カテゴリーをふと見たらシュタイナーとあってびっくりしました:) 娘さんと息子さん、シュタイナー学校に通われているのですね!! 私はシュタイナー学校に通った経験はないのですが、中学1年のときにサクラメントのRudolf Steiner Collegeで日本人のためのサマープログラムに家族で参加して通いたくてたまらなくって興味を持ちはじめ、それ以来そのCollegeで学んでシュタイナー学校の先生になることが夢なんです! アメリカの大学を目指しはじめたのもそれが理由です。

    娘さん、息子さんの学校のご様子の記事などを読んでいると、いいなぁととてもうらやましくおもいました^^

    セレクティブサービスについては恥ずかしながらこの記事をよんで初めて知りました。.....考えさせられることが沢山ありました。息子さん、私と同じ年齢かと思われるのですが、とても私なんかは子どもだなあと恥ずかしくなりました..。息子さんのは大学はもう決定されたのでしょうか。

    大学出願等について自分で細々ブログを書いているのですが、その関係もあって色々なサイトにお邪魔していると偶然ここにたどりついて、大学出願の話だけでなく他にもとても興味深い素敵な記事が沢山あってちょっと興奮してしまいました(笑)いきなり長文のコメントしてしまい申し訳有りません。これからブログを楽しみに読ませて頂きます!!

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  2. コメントありがとう。長文大歓迎。何度も何度も返答したのに、クッキーがおかしいか、全て削除、再再々挑戦。

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  3. やった、やっとコメント投稿できました。やはりクッキーでしたね。
    偶々、日本の保育園に子どもを通わせているとき、名古屋でシュタイナー教育を知って、少し勉強しました。日本で6年過ごした後、上の息子が小学校に入る段階で、シュタイナー学校がアメリカへ戻って来る土地にあったので、あやとりという非言語の面接のみで入学が決まりました.家庭でしか英語を使用していなかったので、最初は公立のようにESLがなく、12年経った今頃、よくわからなかったよと言っていますが。親子共々学校という教育現場にありながら、コミュニティーの中で育ち合いました。日本の公立、アメリカの公立、日本のシュタイナー学校へ息子をはじめ何人か留学し、こうも4者四校違うものかと思うほど、いろいろな子どもへのアプローチがあり、カリキュラムがあることに驚かされます。自己満足かも知れませんが、やはり結果は数10年後を見てくださいというしかないですね。

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  4. モンタギューさん、お返事ありがとうございます!!
    お手数かけてまでコメントを返して頂き感謝です><

    名古屋でお勉強されたのですか! あやとりで面接というのもシュタイナー学校らしい感じがいたしますね^^
    そうなのですか... 日本の公立とシュタイナー学校の差だけでも相当ありますのにアメリカの公立等も入るとかなり経験なさるものには違いがあるのでしょうね。すごく 貴重な経験なのでしょうね。
    確かにシュタイナー教育って大人になってどんどん成熟していくとその成果(?)が目に見えて現れていくというようなことを聞いたことがあります(今でも素晴らしい息子さん&娘さんだということが伝わってくる気が致しますが!)
    私はBeloitを出た後に初めて専門的にRudolf Steiner Collegeでシュタイナー教育を勉強するつもりです。リベラルアーツカレッジでの4年間もその後のカレッジでの4年間も、どちらもとてもたのしみです^^

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  5. このコメントはブログの管理者によって削除されました。

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  6. さらに息子との会話で「国の大義名分やいかなる理由であっても、その手に武器を持ち人を殺めることは、あなたの人生に苦しみを与え続けることになる。そんな苦しみを貴方に追ってほしくない」と訴えた事が彼の中に残ったのか。それ以上は自分の人生だから勝手にするといった言い方をしなくなりました。

    その後の息子の連邦政府と、大学との関わりをここに記します。
    結局、息子は連邦政府から兵役予備登録用紙に、コンシエンシャスオブジェクターの欄がないので、自分はコンシエンシャスオブジェクターとして宣誓すると署名欄に大書したのみです。必要であれば裁判所とう所定のオフィスへ呼び出されると思っていたら、別に呼び出されず(コンピューターで処理されるから彼の大書が無視されたのか?)大学に問い合わせると、民主党党員だって保守すぎるといわれる開かれた大学、Bard college でもコンシエンシャスオブジェクターとして奨学金を申請した新入生は初めてだとして、我が家に保管してある兵役予備登録書のコビー等、書類の往来がさらにつづきました。FA ファイナンシャルエイド課は当初、連邦政府との連携コンピューターに息子の名前が登録されていないから、連邦政府の授業料貸借ローンはだせないが、大学の資金から返済しなくてよい奨学金をだすといっていました。よって授業料の部分39000ドルの半額以上24000ドルは支払わなくてよくなりました。その後、連邦政府に名前があったという事で、その他のカリキュラム代と寮代10000ドル内で4000ドル近くが学籍の間には利子がつかないローンと学内アルバイトを紹介され賄う事になりました

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  7. 前の記事にもコメントさせていただきましたが、

    >連邦政府奨学金、教育費ローン要請の申請書2頁目に男子とチェックすると、徴兵登録は済ませましたかとコンピューター画面に出て来て、これを済ませてないと、それ以上先へはすすめず、申請がそこで滞ってしまう

    これは、とんでもない差別ですね。女性の場合、そのような「徴兵登録しなければ、奨学金を与えない」といった取り扱いはされないわけでしょう?何故、このような男性差別的取扱いが合法とされているのか理解に苦しみます。なお、あなたは息子さんに良心的兵役拒否者として生きて欲しいと願っていたようですが、そうであれば男子に対してSelective Serviceの強制義務が残っているアメリカではなくカナダなどで出産することで国籍をカナダにするという選択は出来なかったのでしょうか?

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  8. 匿名さんいらっしゃいませ。
    国籍を選択したり、性別を不問にするなど逃げる道はいくらでも出来たと思います。しかし母の願いとは別に、息子が考えた結論です。この国で暮らしていくという事はどういう事なのかを考慮し、日本に暮らす選択肢をとらず、アメリカの大学に進学しそこで学ぶ事を選択したのも彼の意思です。それを親として受け止め、どこで出産するかという事は選択肢としていうより、子供を授かったことで決まるでしょうし、出産地を選択する事より、どこで暮らしていくかという事の方が重要課題だと思われます。ただ確かに性差別です。この後の記事を読んでいただければおわかりになると思いますが、アメリカ政府はselective service を強化していこうとする動きさえあります。ドイツ、スウェーデン、台湾の兵役を取りやめるという世界的な傾向に逆行します。現状としては、そうしたことが性差別だとして志願する女性もいます。しかしその前に,アメリカでは
    80年代まで台頭していたfeminismより、女が女という性の特性を生かした動き womenismに移行していったこと、子を産むという特権があることを重要視するようになった背景もあると思われます。

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  9. 返答ありがとうございます。
    スウェーデン、ドイツが徴兵制を廃止したニュースは耳にしています。なお、台湾に関しては、「4ヶ月の訓練」が残るらしいので「廃止」とは言えないでしょう。期間短縮とはいえるでしょうけど。デンマークも4ヶ月になってるそうです。

    ちなみに、日本にいると一番気がかりなのが、韓国の徴兵制度を賛美する声が聞こえてくることです。韓国の兵役制度は徴兵制施行国の中でも、最も厳しい部類に入り、良心的兵役拒否が認められず、代替役務も制度化されていません。そのため、年間700人~800人程度が兵役法違反で有罪判決を受けて刑務所に収監されています。台湾は既に良心的兵役拒否が合法化されており、「代替役」という制度が存在します。よりにもよって、世界で最も厳しい(例外として10年も兵役がある北朝鮮などはありますが)韓国の徴兵制を賛美する言論がここ数年、日本のテレビや雑誌、新聞などで時々主張されることがあります。
    主に保守系言論人や政治家が「近頃の日本の若者は軟弱だから、韓国を見習って徴兵制を導入して根性を叩きなおすべき」といった感じで根拠の無い徴兵制への幻想を述べることが多いです。また、女性言論人からも「最近の少子化は男性が草食化していて魅力が無いからだ。徴兵制を導入すれば男らしくなり、出生率も高まる」などと荒唐無稽な理論を振りかざすケースも見受けられます。

    ところで、アメリカで「selective service を強化していこうとする動き」があるとのことですが、それは女性に対しても平等に課そうという動きではなく、あくまでも男子に対してのみ強化するという方向なんでしょうか?
    「アメリカでは80年代まで台頭していたfeminismより、女が女という性の特性を生かした動き womenismに移行していったこと、子を産むという特権があることを重要視するようになった」ということですが、日本でも最近はフェミニズム的な視点よりも、「男は男らしく、女は女らしく」という反フェミニズム的言説が増えています。その中で、上述したような「男らしさ、逞しさを徴兵制で植えつけろ」といった短絡的な言論も散見されます。

    アメリカのselective service を取り巻く動き(廃止に向かうのか、女性にも拡大するのか、性別は男子のみのまま強化するのか?)は日本にいると良く分かりませんが、「強化する」という動きは嫌なものですね。日本では憲法9条改正がここ10年言われ続けており、自衛隊を正式な軍隊にして軍法会議(そして、脱走者に死刑)を設けようという動きが続いています。このまま、韓国の徴兵制賛美が強まるのは嫌なものです。

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